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Home / ファンタジー / 転生吸血姫 / ep89 マデリーン・ラッチェン(2)

ep89 マデリーン・ラッチェン(2)

Author: 根上真気
2025-06-23 06:11:19

初恋から五年が過ぎた頃になると、マデリーンは女の美貌を纏い始めた。社交界に顔を出せば、ちょっとした注目を浴びるようにもなっていた。まだ社交界デビューには早い年齢だったが、母の命令だった。

母の考えは、ある意味で正しかった。気がつけば若い貴族の男子たちは、彼女の大人びた美貌に目を奪われていた。彼女に言い寄ってくる者も少なくなかった。中にはそれなりの大物貴族の子息もいた

マデリーンはすべての者に丁寧に接し、丁重に躱していた。誰とどうしようが、結局のところ決めるのは母だ。母が良い政略結婚だと思うかどうかがすべてだ。そう思うと、燃えるものも燃えなかった。そもそもマデリーンにとって、貴族の男どもはすべからず魅力的に思えなかった。初恋の彼を、超えられる者などいない。

「つまらない......」

夜の部屋でひとり、窓腰掛けに座り、外を眺めてぼんやりすることが多くなった。そんなある日だった。ある社交界で、マデリーンは王子と出会うことになる。

「あれがラザーフォード王子......」

さすがに王子は、輝きが違っていた。特に第一王子のフェリックスは、何もかもが他を圧倒的に凌駕していた。

遠目に王子たちを眺めながら、彼女は近づいていこうとはしなかった。いくらなんでも、新興貴族の娘の自分が関わっていい存在じゃない。そう思ってマデリーンは、彼らと自分を切り離していた。とはいえそれ以外の貴族の男たちと会話したところで、虚しくなるだけだった。

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